ボケ二輪。
そういえばあれも確かにボケ二輪だった。
あのポンコツの自転車はもうないけれど。
不穏な音をたて景色をどんどん歪ませながら
車体自体はひどく軽いのに、どうしてこうかと思うほどの重い速度は
まるで分身の如く 老体だったボケ二輪。
その上、何段式の優れた機能がどれひとつ使えなかったボケ一輪。
ハンドル横のレバーは触れたら最後。ガクンと大きく揺れてペダルは空回り、
突然氷の上を滑るとか思えば、何の前触れもなく急斜面を昇れという
気まぐれなアメとムチに翻弄されて
騙し騙され何十年。
通り過ぎた場所に何があったか
誰も気づかない
ボケ二輪と私だけが知っていること。